「ケーブルテレビはNHK受信料の対象外」国も否定できず
ケーブルテレビ(CATV)について、国会議員が、受信料を支払いの対象だというなら、その基準と根拠を示せ、という質問をしているのですが、話がちょっと変な方向に……。
CATVは、法律上、NHKの受信契約の対象外で、受信料は支払わなくてもいいのではないか、という話の続きです。
質問したのは、松野信夫・衆議院議員(民主党・無所属クラブ)です。
松野議員は、受信料の納入率を尋ねた上で、その計算の基礎となる契約者数に関連して、次のように質問しました。
【質問】(162回国会質問第31号「日本放送協会の受信料未納問題等に関する質問主意書」)
有線型のテレビ放送は電波ではなく有線を活用しているし、パソコンの場合はDSLや光ファイバーを活用しているため、このような場合、そもそも日本放送協会の発する電波を利用していないとも考えられ、放送法に基づいて受信契約の締結を求め受信料を徴収することが可能かどうか不明である。
政府としては、こうした携帯電話、パソコンでのテレビ受像及び有線型のテレビ放送についても、利用者は放送法に基づいて日本放送協会との間に受信契約を締結して受信料を支払う義務があると考えているか。義務があるというのであれば、その根拠を明らかにされたい。
【回答】(内閣衆質162第31号)
これら(引用者注:携帯電話・パソコン・有線テレビ放送)が協会の放送を受信することのできる受信設備であれば、法第三十二条第一項及び日本放送協会放送受信規約第二条等の規定に従って、協会と放送受信契約を締結して放送受信料を支払う義務がある場合がある。
「場合がある」ということは、「ないこともある」わけですね。
松野議員は当然再質問しました。
【質問】(質問第40号「日本放送協会の受信料未納問題等に関する再質問主意書」)
(引用者注:前回答弁によれば)携帯電話、パソコンでのテレビ受像及び有線型のテレビ放送についても、利用者は受信料を支払う義務がある場合とない場合とが存在することになる。では一体、これらの三機種について、どのような場合には義務があり、またどのような場合には義務がないというのであるか、明らかにされたい。
【回答】(内閣衆質一六二第四〇号)
協会からは、お尋ねのいずれの場合についても、日本放送協会放送受信規約第二条等の規定に従って放送受信契約を締結する義務があるかどうかを判断しており、例えば、当該受信機が設置されている住居について既に放送受信契約が締結されていれば、改めて放送受信契約を締結することを求めず、他方、当該住居において放送受信契約が締結されていなければ、放送受信契約及びこれに基づく受信料の支払を求めていると聞いている。
話がずれちゃってますね。
どうも、最初の質問の「日本放送協会の発する電波を利用していないとも考えられ」にたいして、答弁は「協会の放送を受信することのできる受信設備であれば」と返していて、そこがすれ違っちゃってるようです。
「協会からはこう聞いている」と逃げているところを見ると、CATVは受信契約の対象と言っちゃうと有線テレビ法との矛盾を指摘される(たぶん内閣法制局がそんな答弁を認めない)し、だからといってCATVは対象外とすると膨大な数の受信契約を解除して返金しなければならなくなるし……、という板挟みになっているんじゃないかな、と思うのですが……。
松野議員は、再々質問をしています。25日には答弁されるはずです。衆議院のサイトにアップされるのはもっと後になりますが……。
※1 この質問と答弁は、衆議院のサイトで見られます。
※2 国会では、国会中継やニュースで見る、本会議場で原稿読んでるものや、委員会で(なぜか発言するたびに挙手して指名されなければならない)一問一答形式のものは、「質疑」といいます。
「質問」は、会期中に限り、議員が内閣に書面(「質問主意書」という)を提出し、内閣も書面で答弁する、という制度です。答弁は原則7日以内。
議員が少なくて委員会に委員を出せない又は質疑の時間が少ない会派の議員や無所属議員が主に利用しています。
※3 このやりとりでは、このほかにも、こんな質問と答弁がありました。(質問と答弁を再構成します)
(1)受信料の納入率
【質問】政府は受信料の納入率をどのように把握しているか。
【答弁】平成15年度で96.01%。
【再質問】答弁の数字の分母と分子は何か。
【再答弁】分母は受信契約を結んでいる者の払うべき受信料総額、分子は実際に納入された額。
→受信料支払い拒否のため、最初から契約していない人や「テレビを廃止した」と言って契約解除した人は分母に入っていない。だから、本当の納入率(納入された受信料総額/受信契約すべき数×受信料額)はもっと低い。さらに下記の問題が……。
(2)ケータイ・ケーブルテレビの場合、どうやって受信者を特定するのか。
【質問】1)「テレビ受像が可能な携帯電話・パソコン・有線テレビの利用者の支払うべき受信料額及び実際の納入率はどの程度と考えているのか。
2)実際にどのようにして支払うべき者を特定し、徴収するのか。携帯電話利用者に受信契約を求めても、現実的にはほとんど期待できないのではないか、と思われるが。
【答弁】1)NHKでは集計しておらず、改めて調査を行う場合には、詳細かつ膨大な作業が必要となるため困難。
2)「個別の視聴実態は多種多様であり一概に申し上げることは困難であるが、実態に応じて協会の集金取扱者等において適切に対処しているものと承知している」。
【再質問】1)把握していないのならば、そもそも収納率の正確な分母を把握していないということではないか。どうやって対象者を把握しているのか。
2)従来は、集金人等がアンテナを確認して徴収することが一般的であったが、携帯電話・パソコン・有線テレビは「そうした手法では無理であり、まず通常の方法では特定しようがないと考えられるが、それでも特定できるというのであれば、実際どのようにしているのか」。
【再答弁】1・2)「方法については、多種多様であるが、例えば、協会の集金担当者等が各家庭、企業、団体等を訪問し、協会の放送を受信することのできる受信設備の設置の有無を尋ねる等の方法が行われていると聞いている」。
→つまり、契約すべきものの数を把握していない。したがって収納率の分母はいい加減ということ。
(3)【質問】総合テレビは映るが教育テレビが映らない地域がある。テレビが映らないのに受信料を払わなければならないのは不当だと思うが。
【答弁】全く視聴できないようなら送受信契約を締結する義務はない。御指摘のケースでは、協会の放送を受信することのできる受信設備を設置しているものと考えられることから、受信契約を締結して受信料を支払う義務があるものと考えられる。
→総合と教育のどちらかが映るなら受信料払え、ということ。
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